赤いローファーを履いて出かけた。伸びたままの足の小指の爪が靴の内側に引っかかるととても怖く、とっさに引っ掛かりを防ぐ動きをすると、いきなりぐにゃっと足の力が抜けた人みたいになる。この靴を履く時には爪を切っておかなければいけないのに、いつも忘れて1日に二度くらいその動きをしてしまう。赤い地下鉄と黄色い地下鉄を乗り継いで出かける。スーツを着た人が多いあたりに行くのは久しぶりだった。帰りの車内で一緒にいた編集者と話を始めたら目の前に座っていた女性が立って遠くに移動した。申し訳なく思う。帰って来てから柔らかい服に着替えたら力が抜けてしばらく眠った。
歯を抜く予約を取らねばならないのだが3日くらいぐずぐずしている。でもまあ覚悟ぐらいはさせて欲しいと思う。横になりながらよくよく思い浮かべて、起きて作った夕食の冷たい麺は、思った通りの味でおいしかったが生のニラの臭いが強かったのですぐ歯を磨いた。歯のことはやっぱり気にかかっている。気にかかっているだけなのも面倒だ。
外出して人と会い、身体的にも気分にも緩急があったからか、風呂の湯がとても気持ちよかった。風呂から上がって、小指しか塗っていなかった手の爪の残りを銀色とパールとグレーとオレンジ色に塗って、足の爪も短く切った。