食料品を買いに行く時によく見る白猫がいる。ボサボサした老猫で、目つきは鋭いがそんなに警戒心は強くない。耳先がカットされているのでノラの経験があるのだろうが、柿の木のある一軒家のポーチによくいて家主らしき人が自動車を洗っている時に2メートルほど離れたところで眠っていたりするので今は飼われているのかもしれない。たまにしゃがんで顔を見ると怪訝な顔をされるので、いつも近くを通り過ぎるだけにしている。猫は構われるのが嫌いだけれど知らん振りをしていると近くに寄ってくる。視線を合わせると緊張するのでお互い違う方を見る。そういう存在が時々とても恋しくなる。けれど私は自然と居ついた猫としか暮らしたことがないし、猫をこちらから選ぶものではないという気がしている。
白猫は少し前、顔に大きな切り傷を負っていた。喧嘩をしたのかもしれない。子供の頃私の家にいた猫は火種に首を突っ込んではすぐ逃げるタイプだったので喧嘩の傷は後ろ足にできることが多かった。白猫は正面から闘うタイプなんだろう。ピンク色の傷は生々しくて心配になったが数週間後にまた見たら傷はもうほとんど治っていて道の真ん中で大きな体を折り曲げ腹を舐めていた。アスファルトとのコントラストで白い毛皮が柔らかく伸び縮みするのが見えた。
晴れていたが雨が少しだけ降った。暑かったのでちょうどいいくらいに思ったが、おやつが欲しくなりパン屋を見に行ったら日曜日は休みで、迂回してコンビニで冷やしぜんざいと迷って今川焼きを買っている間に大粒の天気雨になった。寒くはなかったが眼鏡が濡れて前が見辛かった。雨宿りをしている人がいて、確かにすぐに止みそうだと思ったがそのまま帰り、着替えたら新しく出したTシャツが温かかった。